配線チューンの盲点

よく耳にする、「バッテリー~ブラシまで標準より太い配線で一本化」なるチューンナップ。
一見すごくいいことのように聞こえますし、当店へ同じような内容の改造を求められることも少なくありません。
ですが、申し訳ありませんが当店ではこの手の改造についてはメリットよりもデメリットが大きいと判断し、作業を承っておりません。

ヘッド部に配線の接続部がないので、作業性が非常に悪いです。

配線に接続があっても、正しいサイズの端子で正しいサイズの工具を用いて作業すれば、効率低下になりません。
接続部があることで、シャフトのボールベアリングやヘッドの分解作業がこの部分から開始できますが、接続部がないとモーター部から分解するしか方法がありません。
作業性が非常に悪くなります。

太いケーブルは、ケーブルドラムやピニオンのケーブル穴を通すことができません。

そのため、ブラシへの電源ケーブル以外の変速信号線を傷めることに繋がります。
写真では、オレンジとブラウンのケーブルが折れているのが判ります。
ブラウンは直接エレキの動作に無関係ですが、オレンジとグリーンは折れて断線すると、エレキが動作しなくなります。

この手のエレキの作業については、申し訳ありませんが当店ではヘッド部で配線を一旦カット、ヘッド~ブラシ間は標準の電源ハーネスへ戻すことを条件に作業を承っております。

そして普段目に入らないモーター部でもデメリットが。

変速信号線の処理が甘いため、アーマーチュアコアに接触してます。

電源ケーブルが太くなることで、スペースや配線の取り回しが悪くなることが原因です。

正しい処理はこういう風にします。マイナスの配線の後ろへ隠すように取り回しします。
このあたりは配線チューン以前に、このタイプのエレキの作業では基本中の基本の部分です。

こちらは他のショップのエレキ。
マイナスのブラシケーブル自体がアーマーチュアコアに接触、内部の銅線が見えてる状態です。

変速信号線も標準状態へ戻します。
細い信号ライン3本がバラバラにしないとケーブルドラム穴を通らなかったのですが、本来の外皮でまとめた状態でヘッド部側へ抜きます。
この状態であればドラムの角で細い信号線がすれたり折れたりも被害が少なくすみます。

これが正しい姿!と思うんですけどね。

まあこの手のチューンは気持ちが上がる、なんとなくイイ物を使ってるっていう程度の効果なものだと思います。
自動車の燃費向上グッズなどと同じ、オカルトチューンですね。

当店を含めて、普段からエレキを触りまくってるショップほど、この手のオカルトチューンには手を出さないですね。